縦割りの生活の中で

                       園長  原 田 京 子

 立春を過ぎてから、雪の降る日が増えたようで、寒い日が続きましたね。今年は常に換気していることもあり、園の中でもあちこちで「さむい~」という声が聞こえています。早く春が来ますように…。寒い時は、上着を着て過ごすこともありますが、上着を着ない時は、ハンガーにかけておきます。この『上着をハンガーにかける』ということが至難の業なのです。お子さん自身が、自分で上着をハンガーにかけるということを家での生活の中では、あまりしないのではないでしょうか。園でかける時、達人は、空中でもできちゃったりします。が、ほとんどの子ども達は、上着を床に広げ、ハンガーのヘリを肩のあたりから袖に通して、反対側も入れようとします。その時に、引っ張り過ぎて抜けてしまい、初めからやり直し…という時もありますし、運よく、袖を通せても、前のファスナーやボタンを留めるのにまた一苦労なのです。(前を留めずに、ハンガーを戻すと、上着がハンガーから離れて下に落ちてしまうからです。)こんなに大変だから、寒いのを我慢した方が楽ちんだなぁ~と考えるお子さんも少なくないですね。

 ある日のこと、同じような時間に登園したぞうバッジさんとうさぎバッジさんの二人がいました。ぞうバッジさんは、あっという間に上着をハンガーにかけてしまいました。すぐに遊びに行ってしまうと思いきや、座り込んで奮闘しているうさぎバッジさんに寄り添うように隣に座ってじっとその様子を見ていました。実際のところそんなに長い時間ではなかったのですが、辛抱強く『待つ』その姿に感心させられました。できる人が代わってしてあげるとあっという間にできてしまうのですが、そうではなく、じっと見守る姿に何とも言えない温かさ、優しさが感じられました。ところどころ、難しそうな所を手伝ってあげながら、うさぎバッジさんが自分でできたような満足感も感じられるような雰囲気でした。それは、意図的にそうしたのではなく、縦割り保育の生活の中で知らず知らずのうちに身についたことではないかと思います。偶然目にした光景でしたが、一日のうちにいろんなところでいろんなことがあるのでしょう。残り少ないぞうバッジさんとの日々がしっかり楽しめますように。